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ねこぢる訃報

可愛くて残酷な漫画、あまりに突然の自殺
漫画家・ねこぢるさん
 
漫画家の、ねこぢる(本名・橋口千代美)さんが五月十日、自殺した。三十一歳だった。漫画誌から小説誌、情報誌などへ連載の幅を広げ、単行本の出版も相次ぎ、作家として上り坂にある矢先の訃報だった。

「最近、オーバーワーク気味だったかもしれない」という業界関係者もいるが、東京都町田市の自宅マンションで、夫の漫画家、山野一氏が不在のとき、元「X JAPAN」のhideさんと似た方法で首を吊ったという報道は、あまりに唐突な印象を与える。月刊誌『ガロ』でデビューしたねこぢるの漫画は、フラットな太い線で可愛く描かれた猫たちと、無垢な彼らが演じる残酷な場面とのミスマッチで、読者の心をとらえた。短編が中心で、一冊で百万部を売るようなタイプの作家ではなかったが、熱心なファン層がついていた。

作品には、差別、復讐など人間の負の部分も、ギャグタッチで描かれた。そこには、人間とはそのような存在だという冷めた目があった。一方で、不思議な魅力を持つそのキャラクターは、東京電力や百貨店の宣伝・広告にも使われた。

作家・写真家の藤原新也氏のファンだったというねこぢるは、藤原氏と同じく、インド旅行記を作品にしている。昨年は、従来の作風とは少し異なる書き下ろし作品も発表していた。それらは『ぢるぢる旅行記』(ぶんか社)、『ねこぢるだんご』(朝日ソノラマ)などに収められている。

所収▶『アエラ』1998年 05月25日